ベースボール・ファイブって知ってますか？　野球の国際的普及を進める世界野球ソフトボール連盟（WBSC）が2017年に発表した、男女混合の手打ち野球です。「侍ジャパン」として活動する日本代表は、4月に韓国で行われたアジアカップで優勝しました。10月に香港で開催される第2回ワールドカップで初の世界一を目指します。島拓也主将（30）に競技のルールや魅力を聞きました。【取材・構成＝古川真弥】

アジアカップでボールを打つ島主将（全日本野球協会提供）

－基本的なルールは野球と変わりませんか

島　攻撃はランナーを一塁、二塁、三塁と進め、ホームにかえせば1点。そこは野球と同じです。ただ、ピッチャーがいないので、バッターは3メートル四方のバッタースボックス内で自分でトスしたボールを素手で打ちます。打つときにボックスから足が出ればアウト。空振りも1回でアウト。ファウル、フェンスオーバー、フェンス直撃打もアウト。また、本塁から4・5メートル先の一、三塁線上を結んだノーヒットゾーンにバウンドさせてもアウトです。

－ホームランはないということですか

島　そうです。力任せに飛ばしてもいけません。基本的に、野手の間を抜く打球を狙います。

－守備はどうするのですか

島　守備も素手です。フライはアウト。ゴロを捕って一塁に投げるのも野球と同じですが、5人で守ります。一塁手、二塁手、遊撃手、三塁手。さらに、野球と違って、二塁ベース付近にミッドフィルダーを置くのが特徴です。

ベースボール・ファイブのフィールドと基本守備陣形

－素手で捕るのは難しそうです

島　慣れないうちは、グラブの感覚で捕りにいって指の先を抜かれることもあります。ただ、基礎的な練習になるので、私もベースボール・ファイブを始めてから野球のゴロ捕球がうまくなりました。野球をやっている人は、冬のトレーニングの一環でやるのもいいと思います。

－ボール1つでプレーできるんですね

島　はい。ゴム製のボールを使います。バットやグラブが要らず、誰でも気軽にできるのが魅力です。フィールドは18メートル四方。屋内外問わず「プレー・エブリウェア」を掲げています。キューバの路上で行われる野球遊び「クアトロ・エスキーナス（4つの角）」から生まれたそうです。

－1試合は何イニングですか

島　1イニング3アウトの5イニング制で、2セット先取した方が勝ちです。1試合30分ほど。スピーディーなので、観客は見飽きないと思います。

－どれぐらい普及しているのですか

島　世界70カ国以上です。昨年にメキシコで第1回ワールドカップが開かれ、日本は準優勝。26年のダカール・ユースオリンピックの公式種目にもなっています。国内でも普及が進んでおり、2月に第1回日本選手権が開かれました。

アジアカップで優勝したベースボール・ファイブ日本代表（NPBエンタープライズ提供）

－男女混合なんですね

島　1チーム5人でプレーしますが、必ず「男性3女性2」か「男性2女性3」の組み合わせにしないといけません。

－男女混合のカギは

島　練習からコミュニケーションを密にして、スピード感をすり合わせます。

－女性は不利になりませんか

島　確かに肩が求められる三塁手、遊撃手は男性が多いです。野手の間を抜く打球速度を出すのは難しい女性もいるでしょう。ですが、先に男性が出塁したら、次の女性は進塁打を狙える。男女で打順をどう組むかも作戦です。また、守備がいない場所を狙ってテニスのロブショットのような打球で勝負する女性もいます。それに対し、守備側も位置を変更したり駆け引きが生まれます。（つづく）

◆その他の主なルール　（1）ベースは1辺60センチ。打者走者と守備の衝突を避けるため、一塁ベースは2枚置く。打者走者は基本的に外側のベースを使用。走り抜けてもセーフエリア内はアウトにならない。走者のスライディングは禁止。（2）フェンスの高さは100センチが理想。（3）打者はバッタースボックスに入るとき、使用する方の手を挙げる。打つのはグーでも、パーでもOK。（4）守備が送球したボールがフィールド外に出れば、走者は1つ先に進める。