今月19~21日にかけて行われた、中国・西安で開催されたダイビングワールドカップ第3戦。

今大会はスーパーファイナルとなっており、第1戦のカナダ・モントリオール、そして第2戦のドイツ・ベルリン大会においてランキング18位以内に入った選手のみが出場することができる。日本からは、今年のパリ五輪にも出場が決まっている4名の選手が出場した。

今大会のメンバー4選手、左から玉井、荒井、三上、榎本(翼JAPAN公式インスタより)
今大会のメンバー4選手、左から玉井、荒井、三上、榎本(翼JAPAN公式インスタより)

最も盛り上げてくれたのは、日本のホープである玉井陸斗(JSS宝塚)だった。最終日に行われた男子10メートル決勝。玉井は予選からとても調子が良く、2位で決勝へと進出。勢いそのままに、決勝では6本全てをほぼノーミスで決めた。

その素晴らしい演技に会場中は大盛り上がり。結果は、自身の自己ベストを大きく上回る531・55点で銀メダルを獲得した。

5本目に飛んだ307c(前逆宙返り3回半・抱え型)では、10点を出すジャッジがいるほどの完成度の高さ。最後まで首位を守り続けた中国の楊昊(ヤン・ハオ)選手にあと1歩及ばなかったものの、その差は26・05点。玉井が優勝する可能性を十分に感じられる戦いだった。

最優秀選手賞の中国選手たち(World Aquatics公式インスタより)
最優秀選手賞の中国選手たち(World Aquatics公式インスタより)

強豪である中国の選手とここまで互角に戦える選手は世界にもほとんどいない。会場が中国だったこともあり、中国選手への応援が会場中に響き渡っていた。

そんな中でも実力をしっかりと発揮できるポテンシャルの高さは、簡単に真似できるものではない。今大会での戦いは、さらに彼の強さを世界中に知らしめただろう。

男子は500点がメダルを獲得するためのひとつの目安となる。その壁を世界のトップのみが集まる大会で超えてくる玉井。彼のすごさを改めて感じた。

そして、今大会が今までと大きく異なったのは、高額の賞金が出ることだった。決勝に残った1位~12位までの全ての選手に賞金が準備されていた。

私も選手時代、グランプリでメダルを獲得した時には賞金をもらった記憶がある。だが、その額は200ドル(現在のレートなら約3万1000円)ほど。ちょっとしたお小遣い程度だった。

しかし、今回はそんな金額とは全く比にならない額の賞金である。更に今回は最優秀選手賞も選出され、そこでも、「つま先」のクリスタルトロフィーと共に賞金が手渡された。

日本では飛び込みはマイナースポーツの1つ。選手をしていても全く稼げない。そんな今までの印象をガラリと変えられる時代がすぐそこまで来ているように感じた。もちろん、日本代表となり世界のトップクラスとして戦う事が絶対条件ではあるが。

しかし、未来に希望を持って頑張る子供たちにとっては、1つの大きな目標となるだろう。

パリ五輪まで、あと3か月ほど。間近に迫った大舞台を前に、世界と対等に戦う日本の選手たちの姿がとても頼もしい。確実にレベルアップしている日本の選手たちの活躍がとても楽しみだ。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)