日本ハム田宮裕涼捕手(23)に対し、捕手経験者として深く踏み込んで言わせてもらう。真っすぐと変化球で捕球の構えに違いが出ている。これは相手チームからすれば作戦面に直接関わる情報になる。分かっている他球団からすれば「直されてしまうから黙っていて欲しかった」、日本ハムからは「わざわざ触れなくても」と、両者の本音が聞こえてきそうだが、ここはあえて指摘した。

キャンプから見ていて、田宮の強肩、キャッチング、バッティング、さらには俊足に可能性を感じていた。開幕後は2試合連続完封勝利に貢献し、バッティングも好調を維持している。26年のWBCでは捕手として名前が挙がってもおかしくはない成長ぶりだ。ならば、より高いレベルに自分ではい上がってほしい。

この試合を見る限り、盗塁阻止のため真っすぐの時と、ワンバウンドに備えた変化球の時に違いがあった。田宮にはその自覚がないように見えた。例えば、サインは変化球でも真っすぐの構えを混ぜる、その逆も意図的にフェイクを入れる抜け目のなさは感じられなかった。

私は捕手だったから、構えに違いが出る背景は理解はできる。しかし、そこを両立させようと努めないと。少なくとも、そうした違いは視覚的情報として、相手チームは狙ってくる。

真っすぐ、変化球、どちらも極力同じ構えで備える。これが、捕手田宮の課題と言える。そうでなければ、盗塁へのヒントを与え、特に二塁走者には三盗の可能性が出る。プロの捕手として、突き詰めて弱点を消す努力を求めたい。

試合は西武が若林のサヨナラ2ランで苦しい試合をものにした。初回、金子侑が盗塁を狙うも田宮に刺され、5回1死一塁からは古賀に2球続けてエンドランのサインで積極的に仕掛けた。いずれも得点にはつながらなかったが、ここに活路を見いだすしかなかった。

今の西武は「鳴くまで待とう…」ではだめだ。「鳴かせてみよう…」でないと、苦しい中で勝ちきれない。この試合前までの盗塁成功率は7割。チーム打率2割の状況で、連打の可能性よりも、盗塁で現状を打破するベンチの姿勢が大切だと感じていた。

それこそ連続エンドランで好機を広げた5回1死一、三塁では、長谷川が低めの変化球を空振り三振。ここはコンパクトに右打ちするなど、選手も何が得点に結びつくかもっと考えるべきだと映った。今の西武は愚直にチャレンジを続けるしかない。その覚悟で、ギャンブルスタートでも、セーフティースクイズでも、やれることは失敗も構わずやるしかない。

9回裏は若林のバッティングに託した。期待に若林が応え、サヨナラ弾。何とか走者を進めようと、失敗しながら食らい付いた結果に感じる。両リーグで唯一2ケタ勝利に届かず、苦しさは続く中、大きな一撃となった。(日刊スポーツ評論家)

9回、西武・若林にサヨナラ2ランを浴び、引き揚げる日本ハム・斎藤と捕手田宮(共同)
9回、西武・若林にサヨナラ2ランを浴び、引き揚げる日本ハム・斎藤と捕手田宮(共同)
西武対日本ハム 2回裏西武2死、左中間へ先制ソロ本塁打を放つ若林(撮影・河田真司)
西武対日本ハム 2回裏西武2死、左中間へ先制ソロ本塁打を放つ若林(撮影・河田真司)
西武対日本ハム 9回裏西武2死二塁、左越えサヨナラ2点本塁打で生還し、チームメートと歓喜する若林(中央)(撮影・河田真司)
西武対日本ハム 9回裏西武2死二塁、左越えサヨナラ2点本塁打で生還し、チームメートと歓喜する若林(中央)(撮影・河田真司)