連敗を止めた5日の巨人戦。ヒーローは近本。文句はない。でももっと大きく扱ってほしいと思ったのが投げる方。ブルペン陣の奮闘、でもその割にスポーツ新聞の扱いが小さい、小さすぎる。これが不満だ。

今シーズンも試合の「7回」がキモになる。阪神の場合、僅差で勝っている展開で、ゲラ、岩崎(逆もある)につなぐ7回。5日のゲームで任されたのが3番手の桐敷だった。ヒットは打たれたが、これをけん制で刺し、流れを巨人に渡さなかった。ベンチの中、監督の岡田彰布がウン、ウンとうなずく。計算通りのリリーフだった。

今年、ブルペンには少しばかりの誤算が生じている。昨年、ブレークした島本、石井が本来の姿を出せず、岩貞も2軍のまま。その分、漆原や岡留が出てきたけど、まだまだ不安定。そこでドンと構えているのが桐敷。何とも心強いセットアッパーに育ってくれている。今年も31試合消化(5月5日現在)して14試合のマウンド。プロ3年目、成長は止まらない。

桐敷を見ていると、左右の違いがあるけど、かつての名リリーバー、久保田を思い出す。常磐大から阪神入りし、当初は先発だった。それを後ろに回したのが岡田彰布。前回の監督時、久保田の力量、タイプを考え、当時の投手コーチだった中西と協議。リリーフに回した。

「あの時の久保田の特長は、まず球に力があった。さらに連投がきく。時に複数回を任すことができた。あのタフさはすごかった」。岡田の述懐にあるように、先発からクローザーに転向し、JFKを構築。その後はセットアッパーとして投げ続け、2007年シーズンにはとんでもない記録を打ち立てた。1シーズンでの登板数が「90」。これはもちろん、いまも破られぬ数字である。

このシーズン、セーブはなく、ホールドが46を数えた。さらに防御率が1・75。ありえない数字をたたき出したのに「あの頃はそれほどの負担に感じなかった」と振り返るほど、無尽蔵のスタミナが久保田を支えた。

そこまで極端ではないが、岡田は昨年の夏、桐敷のリリーバーとしての適性を見つけ出した。いまでは有名な話になっているが、フレッシュオールスターで、リリーフで投げた桐敷をテレビ画面で見た。「その時、絶対にリリーフで、いけると確信した」。岡田のアンテナに引っかかった。すぐに1軍に呼ばれ、そこから始まったセットアッパーの道…。久保田の再現というのか、タフネス左腕がキモになる7回を支配するまでになった。

昨年は27試合登板(2試合は先発)だったが、今シーズンはすでに14試合、マウンドに立った。このペースでいけば60試合をクリアする計算になるけど、怖いのは故障。そこはブルペンにコーチになった久保田がいるから、心強い。岡田もかつてのような無理使いを避けている。「あの当時と時代が違う」と、極力、無理をさせない方針を立てている。

投げっぷりの良さは、気持ちがいいほど伝わってくる。地味な存在に映るけど、7回を支配する投手としての存在感は光る。阪神でいえば令和の久保田…。その人がブルペンから送り出してくれる。これもなかなかいい光景なのだ。【内匠宏幸】(敬称略)