阪神梅野隆太郎の“カベ”が光った今季初のサヨナラ勝利だ。相変わらず得点力不足の阪神打線だが必死で守った。象徴的な場面は同点の延長10回表だ。左腕・島本浩也がこの回先頭の丸佳浩に安打を許し、無死一塁。打席に坂本勇人を迎えた時点で指揮官・岡田彰布はマウンドに3番手・加治屋蓮を送った。
岩崎優、ゲラは前日まで2連投。もちろんベンチ入りはしていたし、しっかりリードしていれば注ぎ込む可能性はあった。だが同点だ。時期はまだ4月。2枚クローザーをそろって3連投させるのは難しい。
それもあり、リード、ビハインドのどちらでもいく桐敷拓馬、島本、そして加治屋に出番が来た。その加治屋はまず坂本を中飛に切る。これで1死一塁。打席には2回に適時打を放っていた小林誠司を迎えた。
その2球目。代走に出ていた一走・重信慎之介が盗塁。捕手・梅野は懸命に投げたがワンバウンドし、刺せない。これで1死二塁となった。それでも小林を遊ゴロに抑え、2死二塁。ここで左打者の吉川尚輝が打席に入る。その1ストライクからの2球目だった。
内角低めに投じたフォークが激しくワンバウンド。これを梅野が体を張って止める。止めてしまえば何ということもないプレーに見えるが後逸していれば重信は三塁に進んでいたはず。だが梅野は得意とするブロックでこれを止めた。さらに3球目もワンバウンドしたが止める。そして吉川尚を空振り三振に仕留めることに成功したのだ。
「あそこは頑張りましたね。止められてよかった。あれで進塁されてたら状況も違ってくるしね。あそこを粘れたんでサヨナラゲームにもってこれたんじゃないですかね。ナイスゲームじゃないですか」。梅野もそう振り返った。
さらに言えば盗塁されたことでピンチが広がった面もある。走られてイラッとしてた? と聞いてみると「バレましたか」。こういうところが梅野ならでは、という感じだ。
坂本誠志郎とのぜいたくとも言える併用は続くが、この2試合、梅野は連続スタメンマスクで連勝だ。それもこの日は今季初のサヨナラ勝利。チームも少しは波に乗れるかもしれない。5割に復帰し、19日からは首位・中日を甲子園に迎えての3連戦だ。すでにチケットは完売。マンモスの大歓声の中で今季初の貯金生活といきたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)